ダイス・ロールとは

ライター:赤枝駆動(あかえだ・くどう)/監修:アーカム・メンバーズ

 テレビゲームではキャラクターの行動が困難なものだった場合、その行動の成否は機械やプログラムが判定します。ですが、クトゥルフ神話TRPGをはじめとするTRPGではたいていの場合、ダイス(サイコロ)を使って判定することになります。

 “クトゥルフ神話TRPG”も同様で、困難な状況に陥った場合、特定の能力値や技能値を参照してダイスを振り、 出た目が参照した数値以下なら成功というのが基本的な判定です。このようにダイスを振ることを「ダイス・ロール」と呼びます。

 探索者の攻撃が怪物に当たったか、与えるダメージはどのくらいか、怪物から逃げられるか、崖から飛び降りた時に無事かどうか。そんな行動をやりとげたかどうかをダイス・ロールで判定するのです。

 ダイス・ロールは、TRPGを遊ぶ上で最も基本的なルールの一つです。ダイス・ロールが物語にスパイスを加えてくれます。そんなハラハラドキドキの体験もまた、"クトゥルフ神話TRPG"の魅力なのです。


判定に使われる10面ダイス。片方を10の位、もう片方を1の位として、1から100までの数字を表します(00と1が出たら結果は1、00と0が出たら結果は100と読みます)。


【あるゲーム・プレイの風景】


キーパー:

この館に入るための勝手口には鍵が掛かっているよ。開けたいなら〈鍵開け〉ロールに成功する必要がある。

探索者①:

〈鍵開け〉なら60%ある! 私に任せて!

キーパー:

では、ダイス・ロール!

探索者①:

結果は……「55」! 〈鍵開け〉の技能値「60」以下だから、成功!

キーパー:

では君はスムーズに鍵を開け、館に潜入することができる。しかし、家に入ってすぐに何かが歩いている音が聞こえてくる。

探索者①:

ど、どうしよう! 誰かいる!

探索者②:

まずは様子を見てみよう。キーパー、足音の主が何をしているかわからないかな?

キーパー:

相手に気づかれないようにするなら〈隠密〉ロールに成功する必要があるね。探索者①さんの〈隠密〉の成功率は20%、探索者②さんの成功率は80%だったね。

探索者②:

それなら成功率が高い僕が近づいてみよう。「(わざとらしく声を潜めて)嬢ちゃん、ここで待ってろ。あいつの正体を探ってくる」

探索者①:

「(声を潜めて)気をつけて、あなたならやれるわ」と言って力強くうなずきます。

探索者②:

よし、ダイス・ロール! 結果は「100」!? ファンブル(大失敗)だ!

キーパー:

それでは、あなたは注意深く「その者」に近寄った。しかし、「その者」を気にしすぎて、足元の床が脆くなっていることに気づかなかった! 床が抜け、君は大きな音を立てる。そして、「それ」が君の方に近づいて来る。それは犬面をした二足歩行の怪物で……

探索者②:

そんな~!


行動の成否は能力値や技能値を基準にダイスをロールすることで決まる

 ゲームが始まったら、探索者たちは危険に遭遇することもあるでしょう。あるいは、ちょっと難しくて失敗の可能性がある事柄に賭ける瞬間があるかもしれません。そうした場合、キーパーは、探索者たちにダイス・ロールを指示することになります。例えば、襲ってきた触手を避けるために〈回避〉ロールが必要になるかもしれません。

 ダイス・ロールはD100(パーセント・ダイス)で行ないます。D100は2つの10面ダイスの組み合わせで、片方を10の位、片方を1の位とすることで、1から100の数字を出せます。出た数字が指定された能力値や技能値以下だったら、その行動は成功します。つまり、能力値や技能値はある事柄を成功させられる確率なのです。能力値や技能値を基準にして行なうダイス・ロールをまとめて「技能ロール」と呼びます。

技能ロールの難易度

 技能ロールは必要に応じて行なわれますが、誰でも簡単にできそうなことだったり、判定することで結果が大きく変わらなかったりする場合には、行ないません。例えば、何もない広い場所で、自動車をゆっくり走らせるのには技能ロールは必要ありません。

 ですが、技能ロールの結果で何か起こりそうな場合、例えば、敵が運転するトラックに幅寄せされ、崖から落ちそうな場合には、トラックをよけるために〈運転(自動車)〉ロールが必要になるでしょう。
 状況によっては探索者の行動がもっと難しくなることがあります。雨が降って路面が濡れていたり、あるいは寒さで凍結していたりすれば、運転は難しくなるはずです。

 技能ロールの際、その行動の難しさをキーパーが決めます。難易度は3段階あり、通常のものなら「レギュラー」、難易度が上がれば「ハード」、さらに難しいなら「イクストリーム」となります。
 難易度がレギュラーであれば、技能ロールの基準は、探索者の技能値と同じ値です。この値をフル・バリューと呼びます。
 行動が通常より難しいとキーパーが判断した場合、難易度がハードなら技能値の2分の1の値、イクストリームなら5分の1の値を基準にして技能ロールを行ないます。探索者を作る際に技能値の2分の1と5分の1の値を記入しましたよね。

INTロールと〈アイデア〉ロール

 能力値「INT」を使うロールには、INTロールと〈アイデア〉ロールの2つがあります。どちらも同じ値を基準にしますので、探索者シートではINTと並べて「アイデア」と書かれています。

 INTロールはパズルやなぞなぞを解く場合に使います。〈アイデア〉ロールは、探索者が探索に行き詰まった時に用います。〈アイデア〉ロールに成功したら、キーパーは探索者が見落としている手掛かりや、新たな手掛かりを与えて、ゲームを先に進めることになります。

恐怖に直面した時の〈正気度〉ロール

 "クトゥルフ神話TRPG"は、恐怖に耐えてクトゥルフ神話に立ち向かう人間をテーマにしたゲームですが、 この恐怖を再現するルールが〈正気度〉ロールです。

 怪物と遭遇したり、非現実的な体験をしたり、友人の切り刻まれた死体を発見したりするたびに、現在の正気度ポイントを基準として〈正気度〉ロールを行います。ロールに成功すれば正気度を失わなくて済むか、失っても少しで済みますが、失敗すると正気度を大きく失う可能性があります。

 正気度ポイントが少なくなると、次の〈正気度〉ロールの成功率が下がりますので、恐怖を体験するほど、恐怖への耐性が下がっていくのです。ある意味破滅的なルールですが、“クトゥルフ神話TRPG”の醍醐味の一つと言えるでしょう。

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