『新クトゥルフ神話TRPG』シナリオ「赤い窓」をやってみた! パート2 いよいよプレイしてみるよ!

無料でダウンロードできる『クイックスタート・ルール』とシナリオ『赤い窓』を使って『新クトゥルフ神話TRPG』を友達のグゥちゃんと遊んでみることにした深キン。ちょっと緊張しています。


テキスト:深キン(ふかきん)with アーカム・メンバーズ(七峰きざし)
イラスト:海野なまこ、黒瀬仁

「赤い窓」の導入

いよいよシナリオの開始。深キンがキーパー(以下KP)、グゥちゃんが探索者である全沢直樹になる。


KP(深キン):よし! では、『新クトゥルフ神話TRPG』「赤い窓」を始めていきます! よろしくお願いします!
全沢(グゥちゃん):よろしくー!
KP:シナリオは梅雨の日の夕方から始まります。しとしとと雨が降っていますね。全沢は近所の住宅地で、道端に立って誰かの家を見つめている女性を見かけますね。
全沢:泥棒の下見かな? 知っている人?
KP:そうですね。全沢がいつも通っているコンビニの店員である浅野さんだとわかります! お互いに顔は知ってるけど、あんまり話したことがないくらいの仲です。
全沢:なるほど……急に話しかけると変かな?
KP:そうですねぇ……ちょっと浅野さんの情報を読み返してみますね!

KPの深キンは少し時間をもらって、「3.主なNPC」の浅野奈由について確認した。「ロールプレイの糸口」の項目には、彼女を描写するためのヒントが書かれていた。


KP:ふむふむ……。じゃあ、彼女はいつも丁寧な接客をしてくれる良い人って感じです! 泥棒とかするような人じゃなさそうですし、あなたのことも覚えてくれてそうです。
全沢:なるほど! じゃあ話しかけてみよう。こんにちは! こんな雨の中何されてるんですか!
KP:彼女は慌てふためいて弁明しますね。
奈由(KP):違うんです! 泥棒とか、そんなやましい気持ちがあったわけじゃないんです!
全沢:とたんに怪しくなったね! でも、疑ってるわけじゃないんです。いつもコンビニで丁寧に接客してくださる人だと思って、気になっちゃいまして。
KP:全沢が友好的に接するなら、彼女の態度も少しずつ落ち着いてきますね。彼女は真剣な表情で話をしてくれます。
奈由(KP):実はあの家、私が子供の頃に暮らしていた家なんです。私がずっと見ていたのは……妙なことを言っていると思われるでしょうが、2階の「赤い窓」に死んだ弟の姿が見える時があるんです。
全沢:窓に死んだ弟の姿……? どれどれ、私も見てみよう。KP、2階の窓に弟さんはいますか?
KP:そうですね、全沢は赤い窓の向こうに、死んだお父さんの姿が見えます!
全沢:なにー! 父ちゃん! 父ちゃんは何をしてるの!?
KP:元気にネジを作っています! ウィーン、ウィーン……。しかし、これは「見えた」というより「気づいた」という感覚です。今まで気づかなかっただけで、新しい視野が開けたような。この人智の及ばぬ経験により、探索者は〈正気度〉ロールを行ないます! 成功で1ポイント、失敗で1D4ポイントの正気度喪失です!※
全沢:〈正気度〉ロールだとー!……正気度ってなんだっけ。どうやればいいの?
KP:そういえば初めてのダイス・ロールでしたね。これは……『クイックスタート・ルール』の14ページを見ましょう!
※シナリオでは「1/1D4正気度ポイントを失う」と表現されます。

正気度(SAN)(抜粋)

 探索者がクトゥルフ神話の恐怖に遭遇する、あるいは(友人の切り刻まれた死体を偶然見つけてしまうなど)現実的ではあるが恐ろしい何かに出くわすたびに、探索者の現在の正気度ポイントに対してパーセント・ロール(D100ロール)を行なう。ロールの結果が現在の正気度ポイントを超えれば、正気度ポイントをより多く失うことになる。

KP:正気度は文字どおり探索者がどれだけ「正気」かということみたいですね。そして〈正気度〉ロールは、1D100(10面ダイスを2つ)振って、現在の正気度ポイント以下の値が出れば成功。それより上なら失敗となるんですね。
全沢:おっけー! 失敗したらたくさんの正気度ポイントを失っちゃうってことだね。早速ダイス・ロールしてみるよ! コロコロ……「12」! 現在の正気度ポイント(50)以下だから、成功だよ!
KP:では全沢は正気度を1ポイント失います!
全沢:外から父ちゃんに声をかけます! 父ちゃーん!
KP:残念ながら、すぐに姿が見えなくなってしまいますね。

全沢(グゥちゃん)は奈由と話をして状況を整理した。考えた結果、この家のインターホンを鳴らしてみることにした。

(深キン)ここでインターホンを押すとなると、シナリオに書かれていることを結構すっ飛ばしちゃうことになりそうですね……。大丈夫なのでしょうか。
(グゥちゃん)うーん、どうなんだろう? とりあえず進めてみて、ダメそうなら時を戻すのはどうだろう?
(深キン)そうですね! ゆる~くやりましょう。進めちゃいますね!

都賀邸への訪問


全沢:ピンポーン。
KP:インターホンを押すと、中から初老の男性が出てきますね。貧相な顔つきですが、目だけはやけに大きくて、なんというかギラギラしています。
男性(KP):何かね?
全沢:なんかヤバそうな人が出てきたね……。話しかけるよ! 実は、お宅の「赤い窓」に私の父親の姿が見えまして……。
奈由(KP):私の弟の姿も……。
KP:2人がそう話すと、男は「ふふんっ!」と得意げになりますね。そして、自己紹介をしてきます。
仁伍(KP):私の名前は都賀仁伍(つがじんご)、研究者である。どうやら、私の研究成果に興味があるらしいなぁ。
KP:仁伍は非常に機嫌が良さそうです。〈心理学〉をロールすることができますよ!
全沢:〈心理学〉だってー! ……これはどうすればいいの!
KP:〈正気度〉ロールの時とおおよそ一緒ですが、確認しましょう! えっと、『クイックスタート・ルール』の16ページに書いてます!


ゲーム・システム(抜粋)

 「技能ロール」はゲームの劇的な状況において要求されることになるだろう。技能ロールに成功すれば、自分の目的は達成される。さらに、ある技能のロールに成功した時は、探索者シートにある成功した技能名の左にある四角の印にチェックマークを付ける。

技能ロールと難易度

 キーパーは、技能ロールをいつ試みてよいのか、その課題がどのくらい難しいのかを教えてくれるだろう。
 ■ 通常の課題は、1D100で技能値以下のロールが必要である(レギュラーの成功)
 ■ 難しい課題は、1D100で技能値の2分の1以下のロール結果が必要である(ハードの成功)
 ■ 人間の能力の限界に近づくような課題には、1D100で技能値の5分の1以下のロールが必要である(イクストリームの成功)

(グゥちゃん)パーセント・ダイス(1D100)をロールして、対象の技能の値以下の数字が出れば成功なんだね! わかりやすい!
(深キン)さらに数値が低ければ、成功度が上昇するみたいですね。ここは〈正気度〉ロールとは異なるところですね!
(深キン)そして、〈心理学〉は「他人の動機や性格についての考えを推し量れ、また相手がうそをついているかを見破れる」となっています!


全沢:さては……何か隠し事をしているなー! よーし、コロコロ……「85」、失敗だ。
KP:うーん、どうしよう。じゃあ機嫌が良い以上のことはわからなかったことにしましょう。
全沢:わかった! じゃあ、研究について聞いてみたいな。いったいどんな研究をしているんですか?
仁伍(KP):ややっ! どんな研究とな。それはねぇ、うーむ、まぁ、話してやりたいのはやまやまだがねぇ、君。
全沢:死んだ家族と会えたりするものを作ったんじゃないですか!? 私には会いたい人がいます。ぜひ見せてください! 奈由さんもそう思いますよね!
奈由(KP):はい。私も弟に会いたいです……!
KP:では……技能ロールで決めてみましょうか! この状況に合うものは、これかな?『クイックスタート・ルール』の13ページ、〈説得〉をロールしましょう!
全沢:〈説得〉だね! どれどれ……30分くらいかけて、しっかりと相手を説得するための技能なんだね。僕たちはゲームの中で30分かけて都賀さんと話をしてたのか……! よーし、コロコロ……「7」! 成功!
KP:では仁伍は、30分に及ぶあなたたち2人の熱い想いを聞いて、部屋の中に招き入れてくれます。
仁伍(KP):よし、いいだろう。入りたまえ。私の研究について聞かせてやろう!
KP:都賀邸はごく普通の一軒家ですね。4LDKで広々しています。玄関からホールに入って、目の前にリビングダイニングの扉があり、その横には2階に続く階段があります。あと、都賀邸に入ると、妙な臭いがしますね。
全沢:臭う……汗臭い?
KP:腐臭とも、薬品臭ともつかないですが、とにかく生理的嫌悪を催す悪臭です。脱臭剤とか芳香剤も置かれているんですが、効果はないみたいです。
全沢:奈由さんのほうに目配せをします。臭そうにしてる?
KP:奈由も「オエッ」って顔をしていますね。ここで〈目星〉のロールをしましょう。〈目星〉は隠れているものを発見するための技能です! 今回は臭いのもとを特定するために用いるみたいです!
全沢:コロコロ……「40」で成功だ。
KP:では、この悪臭が2階から漂っていることがわかります。
全沢:いきなり家に入れてもらっておいて臭いなんて、口が裂けても言えない!
KP:都賀も顔をゆがめながら、リビングダイニングへと案内してくれます。
全沢:都賀さんも臭いとは思ってるんだ……。

都賀邸リビングダイニング


KP:この部屋は応接間も兼ねているようです。超大型のテレビや、すごくフカフカのソファ、高そうなお酒のボトルが置かれていますね。
全沢:お金持ちなのかな?
KP:そのようです。もしくは、金遣いが荒いようにも感じますね。
仁伍(KP):まぁ、座りたまえ、私の自慢のソファに。
全沢:ありがとうございます。いやぁ、素晴らしいソファに家具ですね。かなり研究が評価されているご様子で……という感じで、遠回しに何を研究してるか掘り下げてみたいな。
KP:では、仁伍は鼻をフンッと鳴らしながら、もったいぶった様子で話してくれます。
仁伍(KP):君のような人に理解できるかわからないがねぇ、私は時空を超える「赤い窓」を作り出したのだよ。
全沢:時空を超える窓!? まるで意味がわからないですが、いったいどういう原理なんですか。

(深キン)原理……難しいですね。シナリオには「独自の研究」って書いてありますね。
(深キン)こういうところは自分でちょっと埋め合わせてみますか……。
(グゥちゃん)がんばれ深キンちゃん!


KP:仁伍はあなたに難しい専門用語を多用して、まくしたてるように話してきます。ほとんどの意味を理解できません。
全沢:なるほど、まったく理解できませんが、すごいということだけはわかりました! 奈由さんはどうですか?
奈由(KP):ほえ~、難しいですけど、その窓に弟の過去の姿が映っていたってことですか?
仁伍(KP):そのとおりさ。過去も未来も見える。私は「赤い窓」を利用して、「偉業」を成し遂げているのさ。唯一の懸念は、時の番犬だが。まあ、どうということもないだろう。
全沢:時の番犬……? でも、過去も未来も見通せるなんて……。私にもその窓を見せてくれませんか。父ちゃんに会いたいんです! お願いします。
KP:仁伍はどうしようかなぁと、もったいぶった態度を取ります。しかし、自分の研究成果を求められているという状況を悪くは思っていないようです。
全沢:最低でも30分ほど、腰を据えてゆっくり話し合おう! お願いします、お金が必要なら払います! 
KP:なるほど! 〈説得〉がロールできますね!
全沢:コロコロ……「21」、成功!
仁伍(KP):しかたがないなぁ。では、私の「赤い窓」を見せてやろうじゃないか。
KP:仁伍は奈由のほうを見て、にやりと笑いながら続けます
仁伍(KP):君も見たいだろう、「赤い窓」を。
奈由(KP):私も……弟に、成弥(せいや)に会いたいです!
仁伍(KP):いいだろう、ついてきたまえ。
KP:仁伍はそう言うと、2人を2階へと連れていきます。

赤い窓の部屋


KP:2階へ続く階段を上るにつれて、玄関で感じた「臭い」がどんどん強くなっていきます。仁伍は2人を洋室の前まで案内すると、その部屋の扉を開きます。
仁伍(KP):さぁ、これが「赤い窓」だ!
全沢:ついに父ちゃんに会える……!
KP:室内の床には、一面に湿った土が厚く敷き詰められ、白い石が印を描くように並べられています。この部屋を見たとたん、まるで車酔いしたように気分が悪くなりますね。なぜなら部屋のあらゆる平面と直線はゆがんでいて、全体の広ささえも安定せずに変化しているからです。
KP:「赤い窓」の枠からは、細い針金のようなものが壁全体に広がり伸びています。壁全体で見ると、それはまるで電子部品の複雑な基板のようでした。
KP:この異様な部屋を目撃した探索者は成功で0、失敗で1D3正気度ポイントを失います!
全沢:ぎゃー! 部屋がゆがんで見える! コロコロ……失敗! 正気度減少のダイスもロールして……3ポイントの減少!
KP:全沢はかなりのショックを受けたようですね。奈由も同じようです。
全沢:すごい……魔法の力としか思えない! 今すぐに父ちゃんに会わせてほしいと取り乱します! 父ちゃーん!
仁伍(KP):ははっ、落ち着きたまえ。この祭壇を見たことで、おまえたちも高次元を知る者となった。もはや並の人間と関わるのは、ばからしくなるだろう。これから私の偉業を手伝うというのなら、この儀式装置を使うことを許そう。
全沢:偉業? いったいどんなことをするっていうんですか。私に手伝えることなら何でもやらせてください!
仁伍(KP):私はこの装置を利用して、次に高騰する仮想通貨を見極めているのだよ。競馬の結果や、宝くじの当選番号まで思うがままさ! 私は大金を手に入れて、素晴らしい暮らしをするのだ!
全沢:……あれ、なんか言ってること、小悪党っぽいね……。
KP:仁伍の話を聞いて、〈心理学〉かINTロールができます。
全沢:INTの値でロールすればいいのかな? INTのほうが高いからINTにするね! コロコロ……「40」で成功!
KP:では、仁伍が口先ばかりで中身のない人間だとわかりますね。
全沢:ここは話を合わせておこう。お金儲けですか……確かに、素晴らしい話ですね! 手伝わせてください! と言って、赤い窓とかをよく調べてみたいな。
KP:仁伍はニヤリと笑うと、自由に見ていいと言ってくれますね。
KP:「赤い窓」は古風で両開きの窓です。材質は古びていますが、よくわからない金属でできています。窓には大きな鍵穴がついていますね。
KP:それと、部屋のフローリングの床は湿った土が10cmほど敷き詰められています。そこに白い小石で何かの印が書かれています。印の中央部分の土には、古めかしい銀色の鍵が突き立てられていますね。
全沢:鍵穴と鍵……窓の鍵なのかな? でも、窓を開けると何があるんだろう?
KP:全沢がつぶやいていると、仁伍が答えてくれます。
仁伍(KP):あぁ、君。窓は決して開けてはいけない。
全沢:どうしてですか?
仁伍(KP):窓を開けると窓の「つながり」が切れてしまうのだよ。それに、窓を開けなくても「あちら側」に声だけは届けることができる。安心したまえ。
KP:それから、〈目星〉のロールができます。
全沢:さっきも成功したからいけそう! コロコロ……「30」、成功だよ!
KP:では、天井の隅に液体がにじみ出して流れたような青黒いシミがついているのに気づきます。悪臭はどうやらここから漂っているようです。
全沢:さっき玄関で嗅いだのはこの臭いかな?
KP:そんな話をしていると、「赤い窓」が機能し始めます。
KP:基板のような壁の針金に、無数の赤い光がともったかと思うと、左右の窓を素早く行き来を始めます。まるで壁全体が複雑な装置として機能しているように思えます。
KP:全沢は〈機械修理〉〈電気修理〉〈電子工学〉のいずれかをロールしてください。
全沢:よーし! 〈機械修理〉をとってきたんだ!
KP:シナリオとうまくかみ合いましたね!?
全沢:いくぞー! コロコロ……「94」、ダメだこりゃ……。
KP:あらら。では、この動きを見て、左右の窓がつながっていることで、何らかの機能を果たしていることがわかるくらいですかね……。
全沢:さっき都賀さんが言ってた「つながり」というのは本当のようだね。
KP:そして、赤い窓には、とうとう全沢のお父さんの姿が映ります!
全沢:父ちゃん!
仁伍(KP):赤い窓には、時空を超える力がある。父親が見えているのか? さあ、呼びかけてみろ!
全沢:父ちゃんはどんな様子ですか?
KP:そうですね……ちょっと探索者シートを確認しますね!
KP(深キン)は全沢直樹の探索者シートを確認し、父親が自殺したという記述に注目した。
KP:じゃあ、あなたのお父さんは今まさに、首をつろうとしています!
全沢:大声で呼びかけよう。父ちゃーん!

(深キン)プレイ中でも探索者シートを見て展開を考える場合があるのですね。
(グゥちゃん)何気なく書いた設定をシナリオに入れてもらえるとなんだかうれしいね!

「会いたい人」に語り掛ける


KP:全沢がお父さんに呼びかけた時、奈由が赤い窓の正面に駆け寄っていきます。そして、窓に食らいつくようにして、「向こう側」の人に話しかけます。
奈由:成弥! 川では泳がないで! 今すぐ家に帰って!
全沢:奈由さんには弟の姿が見えているのかな? こっちも負けじと語り掛けよう! 父ちゃーん!
KP:すると、奈由の姿が消滅しますね。
全沢:消滅!?
KP:どうやら、奈由の歴史が大幅に改変され、今の彼女はこの時空間に存在できなくなったようです。彼女がどうなってしまったのか、それは神のみぞ知ることでしょう!
 この光景を目撃した全沢は、成功で0、失敗で1D6正気度ポイントを失います!
全沢:そんな! コロコロ……「70」、失敗だ! 正気度減少の値をロールして……「6」! 終わった……。
KP:では、最大値の6ポイントの減少になります! ふふふ、ではここで『クイックスタート・ルール』の16ページを見てみましょう!

正気度(SAN)(抜粋)

 1回の〈正気度〉ロールの結果として探索者が正気度を5ポイント以上失った場合、大きな心的外傷をこうむってしまったことになる。プレイヤーは1D100をロールしなければならない。ロールの結果が探索者のINT(知性)以下であれば、その探索者は目撃したものを完全に理解してわかったことになり、一時的狂気に陥る(1D10時間続く)。


KP:ふふふ、正気度が一度に5ポイント以上減ったので、INTロールをして探索者が狂気に陥ったかどうかを確認しましょう!
全沢:なんかキーパーがノリノリになってる! コロコロ……「8」。INT以下の値だから、一時的狂気だ……。どうすればいい?
KP:『クイックスタート・ルール』の17ページの「狂気の発作」表を見てみましょう。うーん、あ、これ面白いですね! では、全沢は「身体的ヒステリーもしくは感情爆発」に陥って、窓の向こうのお父さんに泣きながら語りかけ続けるというのはどうですか?
全沢:いいね! じゃあ、窓にへばりつきながら、涙を流して叫びます。父ちゃーん! 早まるな! 明日になったら銀行が融資決定の連絡をしに家に来てくれるから! 死んじゃだめだ!
KP:すると、窓の向こうのお父さんは思いとどまったかのように、首つりロープから手を放します。
全沢:よかった……よかった……。でも、大丈夫か? 消えてしまわないか……?
KP:今のところ、全沢は消滅していないようです。
全沢:今のところ……?

猟犬がやって来る!


KP:では、全沢が窓の向こうのお父さんに干渉していると、天井の隅から青白い煙が噴き出してきます。
仁伍(KP):犬ごときが、邪神の力を得た私を……。
全沢:犬? 邪神? いったいこの部屋に何が起こってるの……?
KP:仁伍は強気な態度を見せていますが、その直後、煙の中から飛び出した青っぽい管のようなものに首を突き刺されてしまいます! 仁伍の目からはどんどん輝きが失われていき、ついには廃人のようになります。
仁伍(KP):ぐぁ、この、わ……私が……。邪神、の……神の力を得た、この、私が……。
全沢:ひぇ! なんだこれ、やばい! 部屋から飛び出したい!
KP:ここから逃げても「犬」は追って来そうな気がします。
全沢:いったん引いて、出直そう! 応援が必要だ!
KP:なるほど。では、うまく逃げ切れるかどうか……何がいいだろう。全沢は今、一時的狂気の状態ですしね。
全沢:うーん。あ、これはどう?『クイックスタート・ルール』15ページの「〈幸運〉ロール」!

〈幸運〉ロール(抜粋)

 〈幸運〉ロールは、探索者の外部の環境が問題となる場合、そして運命の気まぐれを判断する場合に、キーパーが求めることがある。〈幸運〉ロールに成功するには、探索者は自分の現在の幸運の値以下をロールしなければならない。


KP:いいですね! では〈幸運〉ロールでお願いします!
全沢:頼むー! コロコロ……「84」! 失敗!
KP:ふふふ! 残念でしたね! では、煙の中から恐ろしい怪物、ティンダロスの猟犬が出現します! この怪物を見た全沢は成功で1D3、失敗で1D20正気度ポイントを失います!
全沢:なんでそんなに楽しそうなんだーー! やばいやばい! コロコロ……「66」、だめだ! 失敗だ! コロコロ……「11」ポイントの減少!
KP:えへへ、全沢は完全に狂気に陥ってしまい、ここで意識が途切れてしまいます。
全沢:なんでキーパーはそんなに笑顔なんだーーーー!!

結末


KP:気がつくと全沢は自宅の前に戻ってきています。どうやら、無事に逃げ切れたようです。
全沢:あれ、助かった……のかな?
KP:家の前にはいつもどおり、お父さんが運転している軽トラがありますね。
全沢:え、どういうこと? 歴史が変わったの?
KP:ふふふ……。
全沢:えっと……玄関を開けて家に入ろう。ただいま……。
KP:では、あなたの父親が元気よく話しかけてきます。
父ちゃん(KP):おう、直樹。おかえり!
全沢:父ちゃん! 父ちゃん!
KP:ふふふ、全沢はこれから自分が改変した世界で、ただ一人、違和感を覚えながら生きていくことになります。
全沢:なんてこった……。ハッピーエンドなの? 歴史、変えちゃった……。都賀さんの家はどうなったのかな? あのバケモノは倒さなくてもいいの?
KP:仁伍の家は空き家になっています。ただ、「赤い窓」だけは相変わらず、路地を見下ろすようにそこにあります。
全沢:あの怪物は倒さなくてもいいのかな?
KP:うーん、そうですね。シナリオには特に怪物を倒す必要があるとは書いていません。「敵を倒す」だけがゴールではないようですね。
全沢:なるほど! 「RPG」っていうくらいだから、ボスを倒して終わりって考えてたや。都賀さんの家は……もう入るのはやめておこう。あの犬に襲われるかもしれないしね。
KP:ふふふ、ティンダロスの猟犬はどこかで全沢のことを監視しているかもしれませんが、それはまた別の機会に語られるべき物語でしょう。

(グゥちゃん)僕の探索者が狂気に陥ってから、キーパーがとても楽しそうなんだけど!
(深キン)なんだか楽しくなって笑いが止まりませんでした! すみません!
(グゥちゃん)僕も楽しかったけどね! いっぱい「父ちゃーん!」って叫べた!
(深キン)では、これにて「赤い窓」は終了です! おつかれさまでしたー!
(グゥちゃん)わーい! お疲れ様でしたー!

プレイを終えて

(深キン)おつかれさまでした! 緊張したけど、楽しかったです!
(グゥちゃん)キーパーしてくれてありがとう! 探索者を1から作って、シナリオでも遊べて楽しかったー!
(深キン)「赤い窓」はキーパーへのガイドも多く、文章も短くて読みやすいので、キーパーをするハードルはとても低かったように感じます!
(グゥちゃん)初めてのキーパーには最適かもね! 次は僕もキーパーをしてみたいなぁ~。
(深キン)もっとたくさんキーパーをしてみたいと思いました! でも、いきなり『新クトゥルフ神話TRPGルールブック』に載っているシナリオだとハードルが高いですかね……?
(グゥちゃん)あれ、深キンちゃん。公式サイト(https://product.kadokawa.co.jp/cthulhu/)で「コーヒー一杯分の恐怖」っていうシナリオが公開されてるよ!
(深キン)本当だ! これは『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』用のシナリオみたいですね! 次はこれで遊んでみますか?
(グゥちゃん)やったー! やりたい! やりたい!
(深キン)探索者2~4人用ってなってますね。ほかの人も誘いましょう!

 深キンとグゥちゃんの絆は、今回のプレイを通じてより深まったようだ! 次は新しい友達も誘って、「コーヒー一杯分の恐怖」で遊ぶ約束をしたぞ! このシナリオも無料でダウンロードできるんだ!
 彼らの“クトゥルフ神話TRPG”ライフはまだ始まったばかりだ!

~完~