2025年12月01日
イベント
50日でシナリオを完成させるロードマップ
ついに応募開始した「シナリオコンテスト2025」。
この機会にシナリオ執筆に挑戦してみませんか?
50日でシナリオを完成させるロードマップを見て、シナリオを完成させるために必要なステップを確認してみましょう!
文:内山靖二郎/アーカム・メンバーズ
シナリオコンテスト2025の詳細はこちら
50日でシナリオを完成させるロードマップ
本来、“新クトゥルフ神話TRPG”のシナリオ作成は、楽しんで取り組むものです。
コンテストありきではなく、もっと自由にシナリオ作成とプレイを楽しんでもらいたい。
その前提のうえで――今回は「新クトゥルフ神話TRPG シナリオコンテスト」に挑戦するみなさんの参考となるよう、シナリオ作成に向けたロードマップを提案します。
もちろん、シナリオ作成の方法に正解はありません。作成するシナリオの内容によって進め方は変わるでしょう。
このロードマップはあくまで参考なので、自分が選んだシナリオにあわせて自由に調整してかまいません。例えば、シナリオの舞台となる時代や町の歴史を調べる時間を多く取る、といった進め方もよいでしょう。
0日目:前準備
必要なもの
“新クトゥルフ神話TRPG”のシナリオを作成するには、『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック(以下、ルールブック)』か『新クトゥルフ神話TRPG スタートセット』が必要になります。
ただし、『新クトゥルフ神話TRPG スタートセット』だけではシナリオ作成に必要な情報が十分とは言えないため、できればルールブックを用意することをおすすめします。
公式アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」を活用する方法もあります。
応募条件の確認
公式サイトで公開されている「応募条件」は、必ず事前に確認しましょう。
特に「原稿規定」と「注意事項」は重要なので、何度か読み返して内容を把握しておきましょう。
予習
公刊されているシナリオや、公開されている過去のコンテスト受賞作を2〜3本読んでおきましょう。
シナリオで共通して使われている項目(「はじめに」「キーパー向け情報」など)や、本文で使用されているルール用語を確認しておくのです。
これらのシナリオは、コンテスト用シナリオの良い手本になります。
1~3日目:シナリオの構想
まずは「自分が遊んでみたいシナリオ」を、100文字程度でまとめてみましょう。
コンテストには応募期限があります。方向性が定まらないままでは、時間だけが過ぎてしまいます。そこで、この3日間で「自分が遊んでみたいシナリオ」=「自分が執筆のモチベーションを保てるシナリオ」の方向性をしっかり決めておきたいところです。
この作業は、「このシナリオでプレイヤーがどのような体験をするのか」を考えることにもつながります。自分の「好き」が、プレイヤーにとっても楽しめるものであるか――ほかの人の顔を思い浮かべながら考えてみることが「誰かに届くシナリオ」への第一歩となります。
一度「これだ」と決めた内容については、今後は変更しない覚悟も必要です。応募期限までの時間は限られているため、途中で大きく方向転換する余裕はありません。
構想の内容は自由です。ただし、テーマが壮大だったり、情報量が多かったり、NPCが多く登場したりする場合は、シナリオの文章量も増えていきます。コンテストの原稿規定(思ったよりも分量は多くありません)に合うボリュームにまとめることも大切です。複雑なシナリオが必ずしも面白くなるわけではありません。
コンテストの原稿規定では、プレイ時間2~3時間程度の短編シナリオが扱いやすいと言えます。もちろん、あなたが可能だと判断するのであれば、長時間プレイ用のシナリオに挑戦することもできます。
4~7日目:シナリオの骨子
次は、シナリオの骨子となる下記3つの要素を決めていきます。
舞台
時代(1920年代、現代など)や舞台(日本、アメリカなど)に加えて、探索者が主に行動する場所も設定します。
豪華客船や廃病院、または探索者が暮らす地元の町ということもあるでしょう。
導入
何が起きて、どのような理由で探索者は事件に関わるのかを決めます。インパクトのある出来事や、NPCが導入のきっかけになることが多いです。短編シナリオでは展開が早いため、探索者が事件に引き込まれる理由は特に重要になります。
元凶
事件を引き起こしているもの、恐怖をもたらしているものを考えます。NPC(狂信者、軽率な研究者など)、クリーチャー、あるいは邪神の影響といったものがあるでしょう。シナリオの中心となる部分なので、後回しにせず、この段階でしっかり検討しておきましょう。
この段階では、メモ書き程度でもかまいません。その代わり、思い付いたアイデアをどんどん出し、よくないと思えばためらいなく捨て、新しいアイデアをまた出しましょう。
骨子が弱いままだと、この先の執筆で迷いが生じやすくなります。「これは面白い」と自信を持てる内容を、ここで固めておきましょう。
8~14日目:シナリオの全体像
シナリオの骨子を元に、ここからは内容を具体的に詰めていきます。下記の項目を埋めていくことで、シナリオ全体の見通しが立ってきます。
項目は、順番どおりに書く必要はありません。書きやすいところや、イメージが固まっている部分から進めていきましょう。筆が止まった場合は、別の項目に移ってしまいましょう。
この段階では、内容が断片的であっても問題ありません。ただし、シナリオ執筆の前段階として、「他人が読む文章」であることを意識して書いていくと、メモ段階では見えていなかった粗に気づきやすくなります。
元凶はなぜ「それ」を起こしたのか?
多くの場合、元凶は狂信者やクリーチャー、邪神の影響など、クトゥルフ神話にかかわる存在になります。では、それらはなぜ前述の「導入」となる出来事を引き起こしたのでしょうか。
この部分は物語の背景に深く関わるため、ほのめかすだけではなく、キーパーに伝わるようにわかりやすく書く必要があります。
導入にふさわしい神話存在を探す際には、公式アプリ「クトゥルフ神話TRPG ルールブックPLUS」の「神話存在逆引き辞典」も役立ちます。
探索者の動機
「導入」を元に、探索者がなぜ事件へ関わるのかを決めておきます。
巻き込まれたのか、依頼されたのか、あるいは知的好奇心によるものなのか。理由を明確にしておきましょう。
解決方法
事件には、何らかの解決方法が必要です。
ただ、解決と言っても、必ずしも元凶を排除して問題を完全に収束させることだけではありません。恐怖から逃れ、安全な場所へ到達することも解決の一つといえます。
解決のために必要な行動や道具など、シナリオで想定される解決方法を1つくらい提案しておくと、キーパーにとってプレイしやすいものとなります。
一方で、解決方法が1つだけとはかぎりません。探索者のアイデアによって、別の解決手段が生まれる余地を残しておくことも大切です。
15~19日目:シナリオの肉付け
次は、実際のプレイで探索者が関わる部分を考えていきます。内容はシナリオによって変化しますが、主に下記のような要素が中心になるでしょう。
調査
前述の「解決方法」にたどり着くために、探索者は何をする必要があるのか。
シナリオには、どこで何をすればどのような情報が得られるのか、その一例を示しておく程度で十分です。探索者の行動すべてを網羅しようとすれば文章は膨大になってしまいます。
事件
一方、能動的に行なう調査とは別に、探索者の身に事件(アクシデント)が降りかかることもあります。
こうした事件は探索者の危機感や緊張感を高め、恐怖の物語を盛り上げる効果があります。なお、事件を切り抜けたことで「解決方法」につながる有益な情報が得られることにしてもよいでしょう。
クライマックス
解決前に立ちはだかる最大の障害であり、物語がもっとも盛り上がる場面です。
シナリオ側からクライマックスを提示することは必須ではありません。探索者の行動によって展開の振り幅の大きいシナリオでは、あえて提示しないこともあります。
ただし、2~3時間で終わる短編シナリオであれば、わかりやすいクライマックスを用意しておくと、キーパーがメリハリを付けやすく遊びやすくなります。
20~34日目:シナリオの清書
いよいよ、ここから執筆の本番になります。これまで出してきたアイデアや、断片的に書き進めてきた各項目を統合し、人に読んでもらえる1本のシナリオとしてまとめていきます。
最初に丁寧に
まずは、公刊されているシナリオにも共通してある項目「はじめに」と「キーパー向け情報」を丁寧に執筆しましょう。
ここは、これまで考えてきたシナリオのトーン、テーマ、物語の内容を整理する最後の機会になります。ここで整理がつかないようでは、この先の執筆も進められません。「はじめに」と「キーパー向け情報」を書きながら、シナリオ全体をあらためて見なおしましょう。
本編執筆
その後の各項目は、これまで書き出した断片をシナリオ内に組み込んでいきます。項目の配置については、公刊されているシナリオが参考になるはずです。
この段階では、読みやすい文章であることに加え、本当に必要な要素だけを残す取捨選択が求められます。これまでの雑多なアイデアを整理して、読者(キーパー)にとって必要十分な内容にまとめていきます。
執筆中は、常に「自分以外の誰かが読む」ことを意識しましょう。
執筆の注意
多くの人に読んでもらうことが想定されるコンテスト用のシナリオでは、ネットスラングや身内だけで通じる言葉、略語の使用は避けましょう。
ルールブックで使われているルール用語を使用しましょう。
あなたのシナリオを読む人は、まだ“新クトゥルフ神話TRPG”に触れたばかりで、ネットでは一般的に使われている言葉であっても、何も知らない可能性があります。あなたと読者との共通認識は、ルールブックに記載されている内容だけだと考えて執筆することが大切です。
35~45日目:シナリオの調整
本編が8〜9割ほど完成した段階で、執筆と並行してプレイテストの予定を立てておきます。
プレイテストはプレイヤーの都合にも左右されるため、早めに予定を組んでおくと進めやすくなります。
プレイテスト
あなたがキーパーとなり、実際にシナリオを遊んでみましょう。締め切りまでの時間は限られていますが、可能であれば複数回行ない、タイプの異なるプレイヤーにも参加してもらうとよいでしょう。
プレイヤーからの感想は大切です。ただし、「悪かったところ」については、キーパーをしている本人が気づけることが多いため、そこまで重視する必要はありません。
重要なのは「面白かった」という感想です。それは自分では気づいていない魅力であることもあり、指摘されたのであれば伸ばしていきたい部分になります。
キーパー視点で読み返す
読者の気持ちになってシナリオを読み返して、内容が過不足なく書かれているか確認しましょう。
不必要にくどく書いている部分はないか、逆にはしょり過ぎている部分はないかをチェックします。
原稿規定で許されている文章量を踏まえ、シナリオ全体の情報量のバランスを調整します。序盤ばかりに力を入れてしまい、後半がおざなりにならないようにしましょう。
他人に読んでもらう
他人に読んでもらい、意見をもらうことで、自分では気づけない点を知ることができます。
まずは「面白いかどうか」よりも、シナリオの内容がきちんと理解できるかを確認してもらいましょう。
わかりづらい箇所や伝わっていない部分があれば、「相手の読解力の問題」とせず、自分の書き方を見直す姿勢が大切です。
他人にキーパーを務めてもらうプレイテストは最良の確認方法ですが、無理に行なう必要はありません。ただし、機会があるなら、ぜひ実施しておきたい作業です。
46~50日目:仕上げ
ブラッシュアップ
これまでに得たほかの人の意見を参考に、ブラッシュアップを行ないます。
修正したくなる部分は多いかもしれませんが、締め切りは近づいています。シナリオ全体に影響を与えるような大きな修正は避け、指摘を踏まえた調整やタイプミスの修正、ルール用語の確認などにとどめておきます。
完成させなければ応募はできません。
タイトルと概要
最後の作業として、シナリオにふさわしい「タイトル」を付けます。
続いて、応募要項にある「シナリオの概要」をまとめます。概要とは、導入から結末までの流れを端的に記したもので、映画の予告のようなあおり文ではありません。ネタバレを気にせず、シナリオの内容を網羅して書きます。
応募の前に
応募する前に、念のためコンテストの「応募条件」「原稿規定」「注意事項」をもう一度確認しておきましょう。
原稿を送ってから間違いに気づいて後悔しないように。
シナリオを書き進めているうちに分からないことがあったら、ロードマップを見返してどこでつまづいたのかを確認してみましょう。
シナリオの完成を心から応援しております!