2026年05月29日
新クトゥルフ神話TRPG シナリオコンテスト 2025 結果発表!!
受賞作品 発表
【大 賞】トドロキ「おしえて、こっくりさん」
【佳 作】ナウいヤングマン「グッドバイ・グラビティ」
【佳 作】ひで「英雄の棺は、空だった。」
【奨励賞】かもめ@stayuplate0x0「Gastronome ~あなたの一皿~」
【奨励賞】山本コヤ「Untouchables」
【奨励賞】アノマロ「ニャルラトテップと爆笑のテキーラ」
※ 敬称略
受賞者の方々には、心からお祝い申し上げます。
なお、大賞と佳作を受賞した計3作品は、クトゥルフ神話TRPG公式サイト、クトゥルフ神話TRPGルールブックPLUSの2媒体で掲載を予定しております。
続報をお待ちください!
最終選考作品、2次審査通過作品
○最終選考作品
miwako「川越恋路情」
山田公園「クリスマスの獣たち」
違法建築「凍結戦線異常あり」
○その他、2次審査通過作品
マンボウ「1931年、狂気の亀裂にて」
葛葉紅葉「退廃を詠う王」
ラ=ゴ・ホタテ「星の落穂」
doumoku「これは本当にヒューマルトで起きたんだ」
ペッパー「幻獣狩り」
ハルリ「パレットクレンザー」
アリウス「アーカム小麦事変」
※ 敬称略
選考過程
1次審査(258作品)は、規定の評価基準を満たしているかを軸に、数名が手分けして行ないました。そのうち一定数の作品は、複数の審査員が手掛けることで、異なる視点からも判断しています。
2次審査(75作品)では、1作品を複数の審査員が担当して読み、その中で評価の高いものを16作品選びました。その後、最終選考に送る作品を絞り込みました。
最終選考(9作品)では、アーカム・メンバーズの9名が選ばれた作品すべてを読み、その中から受賞作を決めました。
総評
今年も本コンテストに多くの作品をご応募いただき、誠にありがとうございます。今回は258作品もの力作をお寄せいただきました。シナリオ制作に注がれた時間と情熱に思いをはせつつ、審査員一同、改めて深い敬意と感謝の念を抱いております。
全体を通して、構成や記述が整理された、読みやすいシナリオが豊富に見受けられました。今年公開されたサンプルファイルを踏まえつつ、それぞれに工夫を重ねて仕上げていただいた点が印象的です。
応募規定に挙げたソースブックを積極的に活用した作品も多く見られました。特に“新クトゥルフ神話TRPG グランド・グリモア”の呪文の取り入れ方や、“新クトゥルフ神話TRPG パルプクトゥルフ”向けの意欲的なシナリオなど、それぞれの特性をうまく生かした内容となっていました。
現代社会の世相を反映したシナリオや、SF的な発想を取り入れたものも目立っていたと思います。どの作品にもクトゥルフ神話の要素がしっかりと組み込まれており、創意工夫と挑戦の跡がうかがえました。
(寺田幸弘/アーカム・メンバーズ)
大賞 選評
トドロキさんの「おしえて、こっくりさん」は、現代日本を舞台にした年少探索者向けの傑作です。
作品全体の根底にある悲劇と希望のテーマが、大きな魅力を放っていました。母親への思慕や友人関係のいざこざといった、子供の繊細な心情を浮き彫りにした筋書きは、プレイヤーの共感を誘うでしょう。子供と大人の双方に関わる事件がシナリオの核として盛り込まれているのも、年少探索者でプレイする意義を強調しています。
こっくりさんという親しまれた占い遊びをきっかけに、古い言い伝えとクトゥルフ神話の真実を結びつけた背景情報にも、見どころがあります。これらの手掛かりは、不思議なイベントの描写やプレイヤー資料などにうまく挟み込まれていて、巧みな工夫がうかがえました。
物語の広がりも文字数に見合ったもので、審査員が満場一致で大賞に選出しました。ぜひプレイしてみてください。
佳作 選評
ナウいヤングマンさんの「グッドバイ・グラビティ」は、1930年代アメリカの飛行船を探索するシナリオです。
船内には人間の欲望が渦巻き、意外な謎と真実が詰まっています。しかし限られた舞台の枠にとどまらない、縦横に広がりのあるドラマに衝撃を受けました。奇想天外なアイデアや神話存在の設定、独特のユーモアを交えた恐ろしい描写も見事です。事件の解決には複数の方法が用意されていますが、探索者の行動が失敗に終わっても、面白い展開が期待できるポテンシャルを秘めていると思いました。
欲を言えば、描写の一部に、当時の探索者の知識では知りえない情報が含まれているように見受けられます。そこに気づける工夫があれば、驚きがより増したでしょう。
ひでさんの「英雄の棺は、空だった。」は、1920年代のスコットランドにある農村が舞台のシナリオです。
アイデアや設定は良く練られており、時代の雰囲気と共に、壮大な背景を感じさせます。神話存在の登場のさせ方もユニークで、その斬新な発想力に敬服しました。探索の道中は起伏に富んでいて、さまざまな情報から真実を見極める過程が楽しめそうです。クライマックスの超自然的な解決手段は“新クトゥルフ神話TRPG”ならではといえ、プレイヤーの創意を促す自由度の高さがありました。
総じて完成度の高い内容ですが、重要な手掛かりの入手や神話存在との接触手段に、あと少しの工夫があると、さらに遊びやすくなると思います。
奨励賞 選評
かもめ@stayuplate0x0さんの「Gastronome ~あなたの一皿~」は、現代日本のとあるレストランに赴く話です。
ありきたりの設定とは一味違う、探索の舞台に引きつけられました。単純なストーリーのようでいて、独自のひねりを加えてあるため、調査が単調にならない工夫が施されているのも素敵です。終盤に向け、テーマに沿った解決方法が用意されているのもおしゃれです。クライマックスに神話存在が出現する描写には心躍りました。
読みやすい文章と相まってわかりやすさは随一でしたが、キーパー向けのプレイガイドがあと2、3あれば、このシナリオの面白さがもっとはっきり伝わるはずです。
山本コヤさんの「Untouchables」は、禁酒法時代のシカゴを舞台に、探索者とギャングが対立するシナリオです。
映画「アンタッチャブル」でも描かれた1930年の情景が、もぐり酒場やダイナーといった探索場所に表れており、抜群のムードをかもし出していました。神話存在の設定や呪文の使い方にも秀でた点があり、それがクライマックスの面白さに生かされていたと思います。
あえて一言申し上げるなら、登場人物は少し絞って、描写に必要な情報をもっと付け加えるとよいかもしれません。とはいえ、有名人がいたり描写の指針が盛り込まれていたりとサービス精神は十分感じられました。
アノマロさんの「ニャルラトテップと爆笑のテキーラ」は、現代のメキシコで悪夢のような出来事を体験します。
舞台の選択が絶妙で、エキゾチックな雰囲気がしっかり感じられるところが秀逸でした。プレイヤーの想像力を喚起させる巧みな描写や、独創的で飽きさせない道中のイベントには、惜しみない称賛を送ります。プレイ時間が短めであったり酒がキーアイテムであったりするのも、シナリオ独自のトーンに合っています。狂気と笑いは紙一重という思想をよく体現していると思いました。
驚かされる展開の連続に圧倒されるかもしれませんが、気心の知れたプレイグループであれば楽しめるでしょう。
最終選考作品 選評
miwakoさんの「川越恋路情」は、大井川の川越しに焦点を当てた、幕末のシナリオです。
舞台設定の選択の妙、情緒あふれる描写、わかりやすく美しい物語。その素晴らしい着眼点や出来栄えで、多くの審査員の心を捉えました。
しかしながら、この時代における探索者の創造の提案やガイドがなく、キーパーの裁量としているであろう点について、複数の審査員から指摘がありました。
公開シナリオとして多くの方に遊んでもらうには、この点への配慮も重要になると考えています。今後の執筆の参考としていただければ幸いです。
山田公園さんの「クリスマスの獣たち」は、1920年代アメリカ東部で起きた事件の解決を目指すシナリオです。
堅実さをうかがわせる骨太な作品で好感が持てました。探索の動機、手掛かりや伏線の配置、おぞましい真相。これらの要素を不自然さを感じさせずにまとめているため、プレイヤーは恐怖の物語をストレスなく楽しめるでしょう。キーパーへの助言も丁寧で、どんな結末に向かおうとも安心できるフォローがある点も優れています。
違法建築さんの「凍結戦線異常あり」は、第2次世界大戦初頭にソビエト連邦がフィンランドに侵攻した、いわゆる冬戦争が背景の“パルプクトゥルフ”向け作品です。
珍しい時代と舞台を採用していますが、アクション主体の展開がしっかり盛り込まれ、高揚感を味わえます。格好良い乗り物(ガジェット?)も衝撃の登場を果たすので、好きな人にはたまらないでしょう。道中のイベントも作り込まれていて、探索に没入できます。
その他、2次審査通過作品 選評
マンボウさんの「1931年、狂気の亀裂にて」は、キーパー1人とプレイヤー1人が遊ぶシナリオ(1 on 1シナリオ)です。南極大陸を舞台にした大胆なシナリオアイデアと導入には誰もが驚くはずです。トーンの説明や指針は丁寧に言葉を尽くしているので、迷いなくプレイに集中できそうです。絶望感のある結末も味わい深いと思います。
葛葉紅葉さんの「退廃を詠う王」は、大正時代の帝都を背景にした“パルプクトゥルフ”のシナリオです。古き良き冒険小説さながらの世界を感じさせる情景描写や、洗練された演出を、心ゆくまで堪能できると思いました。事件の解決方法にも目新しいアイデアを取り入れ、プレイヤーのひらめきを誘うものでした。
ラ=ゴ・ホタテさんの「星の落穂」は、現代のアメリカを背景に、架空の村で起きる惨劇を描いています。王道のホラーストーリーを踏襲しつつ、不穏なSF風の物語が展開されるのですが、要所にある不気味な演出が探索を盛り上げます。優れたシナリオアイデアや意表を突いた怪物はユニークで、強く印象に残ります。
doumokuさんの「これは本当にヒューマルトで起きたんだ」は、2000年代初頭のカナダで年少探索者が活躍します。シナリオの目的や調査は小学生の探索者にふさわしく、コミカルでユーモアあふれる雰囲気がありました。ちょっとした魔術や超自然的なイベントなど、ハラハラドキドキの展開になりそうな部分が際立って見えました。
ペッパーさんの「幻獣狩り」は1890年代イギリス、架空の都市ブリチェスターに赴くシナリオです。幻獣と神話存在を絡めたアイデアには舌を巻きました。探索に自由度を持たせながら、きちんとクライマックスにプレイヤーを導く情報の配置も巧みなもので、卓越した技術がうかがえます。なじみのない時代に対するフォローも万全でした。
ハルリさんの「パレットクレンザー」は、現代日本の山梨県笛吹市で調査を進めるシナリオです。衝撃の導入、不穏な探索、SF風のクライマックスと、展開の面白さが光っていました。神話存在の設定を活かした背景や登場人物の造形には深みが感じられ、キャンペーンのエピソードとしても通用しそうな作り込みです。
アリウスさんの「アーカム小麦事変」は、1920年代アーカムが舞台です。当時の社会問題に焦点を当てつつ、現代の世相とも重なって見える点に、独特のブラックユーモアを感じました。探索部分は丁寧で、終盤まで無理なく進められそうなところはさすがです。クライマックスも華美な演出が冴え、盛り上がりに一役買っています。
注目作ピックアップ!
おかげさまで今年も本シナリオコンテストに、多数のご応募をいただいています。
皆さまの力作をできるだけ多く紹介したい、との思いから、審査対象作品の中から印象に残った作品を、簡潔ではありますがコメントを添えて紹介させていただきます。
○Bakpauangus「ジャカルタグランド帰省」
見えない恐怖を描いた野心作で、怪異の設定もユニークです。外国というエキゾチックな舞台と相まって、真相が謎のヴェールに包まれている感覚がありました。
○有味風「大陵五星封禍録」
神社や神事の描写や専門的な情報が、よい雰囲気をたたえていました。丁寧で重厚な設定が見られる一方、探索者の目的が明快なので、円滑なプレイも望めそうです。
○モリゾースーツ「赤とんぼの帰り道」
和の情緒にあふれる幻想的で美しい物語は、ゲームへの目配りがきいていて、ラヴクラフトの幻夢境ものの翻案としてよい出来だと思いました。
○雪音「ギルデッド・インク」
コンパクトな舞台設定に、西部劇のような荒廃した雰囲気が漂っているのがよいです。終盤における神秘的な風景の描写も素敵で、楽しいプレイになりそうです。
○後乃めりー「魚籃観音魚施餓鬼」
探索の舞台となる村に行くまで一手間かかるのですが、そこに好奇心を刺激されてしまいました。シナリオ全体の雰囲気や不気味なイベントが秀逸です。
○北瓜亜リア「歌う芋人間」
ユニークな発想の作品は数あれど、この作品のシナリオアイデアには唯一無二の衝撃を受けました。丁寧でわかりやすい文章もよかったです。
○ありゃま「宝石の唄」
興味を引く導入、多彩なイベント、プレイヤーの自由なアイデアを許容する工夫を凝らしたクライマックスなど、丁寧な文章の中にさまざまな魅力が感じ取れました。
○じょんそん「蜘蛛を燻す」
文字数に見合った規模と展開で、隙のない構成にうなりました。探索の仕方に独自の工夫を重ね、達成感と緊張感のバランスをうまく保っていました。
○無敵艦隊ガガドドン「夜泣き」
怪談めいた話に、強い興味を覚えました。導線はわかりやすいもので、プレイしやすそうです。要所要所の不気味な演出も印象に残りました。
○らん「Remember, Remember」
海外の小説に着想を得たアイデアとイベントがユニークで、プレイヤーを飽きさせない工夫がうかがえました。なじみのない人向けの説明があるのも親切です。
○ジャン=ミシェル・えすぜっと「滑稽噺『忍者一服、落語まんじゅう』」
冒頭の衝撃的な展開には驚きました。コミカルなトーンで進行する道中や解決の方法が多彩で、プレイヤーを楽しませようとする姿勢が伝わってきました。
○鈴ノ鳴星「0と1の究明」
Vライバーやネットに現れる亡霊のうわさなど、現代ならではの設定が魅力的です。SF風の味付けも真相の悲劇を彩っていて、探索者しだいのエンディングも良いです。
○乙附想「推死活問題」
アイドルがテーマで、現代の推し活文化がシナリオとしてうまく生かされていました。なじみのない人へのフォローもしっかりしていて、好感が持てます。
○みながわやすふみ「誰も知らない腹の内」
現実にありそうな、体内に潜む恐怖をテーマに据えたのはユニークで斬新でした。探索者がとれる行動にも、自由度の高さを感じました。
○メビウス「カラクリ時計は何を奏でる」
屋敷の中が舞台で、探索の楽しさがよく表現されていました。部屋の描写が丁寧でイメージしやすく、小道具の使い方も巧みでした。
○宵ノ口「ゆりかごにおしこめる」
忘れられた祭事に隠された意味がある、というのは王道といえる設定です。そこをシナリオとしてうまく落とし込んでおり、イベントや描写もよくできています。
○湯うなぎ「欠片を継ぐ者達」
日本の風土病をテーマに、モデルとなった歴史的背景がシナリオとよく調和しています。構成や描写のうまさもあり、プレイヤーを納得させる力が感じられました。
○上野篤史「異聞する電脳の声」
学園の準備したAI学習によって生徒の間に異変が起こる、という導入は、AI技術が騒がれている今の世の中だからこそ興味を引かれる、身近で面白いテーマでした。
○カフス「七伏小話探報」
さまざまなシナリオアイデアを並べた、独自の構成に新鮮さを感じました。七伏市を舞台にした公刊シナリオの登場人物が顔を出すサービス精神もうれしいです。
アーカム・メンバーズ 審査員寸評
今回審査にあたった、アーカム・メンバーズ全員のコメントも記載させていただきます。
皐月野鷽
今年も独創的なストーリーの作品が多かったのはもちろん、全体的に「ルールへの理解」が深まり、「ゲームとしてのギミック」などにも、より工夫が凝らされているように感じます。TRPGは没入感のある物語を紡げることも魅力ですが、「ゲーム」であるということも忘れてはいけません。第三者がシナリオを遊ぶときに困らないよう、ルールの運用方法や特殊な処理の説明なども明記するように心がけていきましょう。
大賞「おしえて、こっくりさん」はオーソドックスな怪談ものをベースにしつつ、神話存在の設定をうまく盛り込むことで印象的な場面を演出していました。年少探索者シナリオである「必要性」もしっかりとあり、「多感な小学生」という要素により深みのある物語に仕上がっていました。
個人的に気に入ったのは奨励賞「Untouchables」です。アメリカのクライム映画を思わせる雰囲気づくりやキャラクター造形などは秀逸であり、神話存在の用いる「異界のテクノロジー」に関する解釈も非常に興味深いものでした。
作品を投稿された皆さま、お疲れさまでした。次回も素晴らしいシナリオの数々が創造されることを期待しております。
小川涼
シナリオコンテスト2025にご応募いただいた皆様、お忙しい中、意欲的に作品を仕上げ、投稿まで至られたことに、敬意を表させていただきたいと思います。
今回、拝見させていただいた作品はごく一部ではありますが、いずれも力作で、素晴らしい作品でした。今回、本編だけでなく、プレイヤー資料においても、年々、皆様のレベルが高まっていることを感じました。
個人的には、“新クトゥルフ神話TRPG”をいろいろな時代背景や場所を舞台として遊ばれている方がいるところが、非常にうれしかったです。また、“グランド・グリモア”や“パルプクトゥルフ”のような最新の追加ルールにもチャレンジし、それを取り入れた作品もありました。さまざまなルールや設定を取り込むと、物語の幅も本当に広がるのだと改めて感じさせていただく機会になりました。
次の機会に、再び皆様の作成したシナリオと出会えることを楽しみにしております。
内山靖二郎
今回も多くのご応募ありがとうございました。
舞台設定に工夫を凝らした作品がそろい、楽しく審査させていただきました。
数ある魅力的なシナリオの中から、さらに秀でた作品を選ぶのには苦労いたしましたが、今回は物語と文章量のバランスが評価の分かれ目となることが多かったです。
面白さを追求するあまり状況を複雑化させすぎたり、背景の規模と文章のボリュームが噛み合っていない作品が見受けられました。シナリオコンテストにおける規定の範囲内で、何を表現し、何を伝えるのか。その取捨選択も重要です。
その点で「おしえて、こっくりさん」は、明確なテーマとそれを表現する工夫、そして文章のバランスが優れており、納得の大賞選出となりました。
一方で「グッドバイ・グラビティ」は、個人的には一番「面白い」と評価した作品でした。ただ、詰め込まれた魅力的な要素に対し、規定の文章量では収まり切っていない印象があり、惜しい結果となりました。そのセンスを大切にしつつ、全体のバランスにも気を配ってみてください。
立花圭一
今回もたくさんのご応募、ありがとうございました。
応募されたシナリオは回を重ねるごとに質が向上しているだけでなく、舞台となる時代や場所、趣向の幅が広くなっており、読んでいてとても楽しめました。
その上で、TRPGという遊びは複数の人間が集まって遊ぶものであるため、参加者の間で共通認識をいかに速やかに構築するか、という過程が必要です。その際、ステロタイプや「お約束」といったものは速やかに認識を共有できる利点がある一方で、安易に利用すると偏見や差別、思考停止などを助長しかねないという欠点もあるため、慎重に取り扱わなければなりません。
珍しい時代や場所を舞台として用いる際、共通認識の構築については、ユーザーがシナリオそのものの記述だけで問題なく遊べるように配慮するべきだと思います。その意味では、内容が優れていたにもかかわらず、そのあたりの配慮を欠いた作品が複数見受けられたのはいささか残念ではありました。今後の精進を期待しています。
瀬戸エイジ
シナリオコンテスト2025!
今年も沢山のご応募をいただき、ありがとうございました。皆さんの作品から、“新クトゥルフ神話TRPG”への情熱や創意工夫が伝わり、私自身も刺激をいただきました。
“パルプクトゥルフ”の登場もあってか、多彩なジャンルや舞台の作品が集まり、“新クトゥルフ神話TRPG”というゲームの懐の深さを改めて感じさせられました。
一方で、コンテストが続いてきたことで、書き手側の「慣れ」も感じました。構成や進行に安定感がある反面、必要な情報や共通認識を読み手へ委ねてしまう作品も見受けられます。また、「こんな発想があったのか」と驚かされる奇抜なアイデアが、やや少なかった印象も受けました。今後も挑戦的な作品に出会えることを楽しみにしています。
今回の大賞「おしえて、こっくりさん」は、古典的な都市伝説をベースにしながらも、巧みな描写や演出が光る作品です。少年誌のベテラン作家による手堅い秀作を思わせる、今回のコンテストを象徴する一作だったように思います。
坂本雅之
ついに応募作が200を超え、ファンの方々の熱いTRPG愛を強く感じております。2次に進んだ作品はどれも素晴らしく、最終審査対象を選ぶのが大変でした。大賞の「おしえて、こっくりさん」は、非常に面白く、導入から最後まで一気に読ませていたきました。年少探索者ならでは物語、対人関係、神話存在への接触の仕方など、きれいにまとめられていると感じました。佳作の「グッドバイ・グラビティ」は飛行船がテーマ。今までもこのテーマの応募作はあったのですが、この作品は神話存在と飛行船の特性そしてNPCの人間関係をきれいにまとめ上げているところがうまいと思います。もう一つの佳作「英雄の棺は、空だった。」は神話存在の特性を大きな物語の一部にして成功した素晴らしい歴史作品だと思います。
個人的に気になった作品を列挙しますと、「凍結戦線異常あり」(“パルプクトゥルフ”!)、「ニャルラトテップと爆笑のテキーラ」(これは「闇の奥」のような物語にするともっと面白いのではとも思えます)、「川越恋路情」(江戸時代探索者の創造について、何か書いてほしかった)、「クリスマスの獣たち」(素朴な田舎の描写からの急転が好き)となりますでしょうか。皆さんがこれからもTRPGを楽しみ、面白い物語を紡いでくださることを祈ります。
七峰きざし
最終審査より参加させていただきました。
最終審査に選出された作品はいずれも大変完成度が高く、中でも大賞の「おしえて、こっくりさん」は群を抜いて素晴らしい作品でした。
一方で、惜しくも受賞にはいたらなかった作品の中にも、非常に魅力的なものが数多くございました。個人的には「川越恋路情」にも強く引かれておりましたため、選外となりましたことは少々惜しまれる思いもございます。
また、二次審査での選外作品を改めて拝見いたしますと、受賞の可能性を十分に秘めた力作も多く見受けられ、多数の秀作の中から選考を行なうことの難しさを改めて痛感させられたしだいです。
応募作品数が増加していることは大変喜ばしいことである反面、それに伴い審査のあり方についても新たな工夫が求められる時期にきているのかもしれません。今後、当コンテストがさらに魅力的なものへと発展していくためにも、素晴らしい作品を漏らさず評価できるような、より充実した審査体制の構築をご検討いただけますと幸甚に存じます。
誠に僭越ではございますが、今後のより良いコンテスト運営への期待を込めまして、一言申し添えさせていただきます。
蓮見かるほ
シナコン2025、おつかれさまでした。
今年は一次選考の一部から最終選考まで拝見しました。例年にない応募件数となり、審査側としてもうれしい悲鳴を上げております。
今回も独創的なアイデアを持つ作品が多く見られました。アイデアの新奇性はシナリオの魅力を決める大切な要素です。ぜひ今後も、身近な出来事や好きなもの、気になる題材から、さまざまな発想を広げていってください。
一方で、そうした斬新なアイデアの魅力を伝え切れず、一次審査や二次審査を惜しくも通過できなかった作品も散見されました。
アイデアと本文はシナリオの魅力を支える欠かすことのできない両輪です。
発想の面白さと、それを読み手・遊び手に届けるための文章や構成力、そのどちらも磨かれていくことを期待しています。
寺田幸弘
今回も応募者全員の個性が輝いていました。拝読した作品から印象に残ったもの(総評で触れた作品を除く。順不同。タイトル一部略。)を挙げさせていただきます。
「マリーセレストの憂鬱」すぐ探索させてくれるテンポのよさと、息もつかせぬ展開は個人的に好みでした。
「幽霊屋敷の怪」読む人を楽しい気分にさせてくれるシナリオですね。クライマックスもひねりが利いています。
「Iron March」導入や情報の与え方に、探索を進める工夫が込められていて秀逸でした。
「邪悪は蘇る」設定や展開にパワーがあって面白いです。探索者に一切の容赦がない点も素晴らしい。
「ぽいかつ!」キャッチーなテーマが新鮮です。独自の構成で記述されているものの読みやすかったです。
「穿ち清める」描写や展開に、ゲームプレイを面白くしようとする熱意がこもっていて好感が持てました。
「ウミビコナ」クトゥルフ神話と日本の伝承を習合させた設定は手堅く、クライマックスも盛り上がりそうです。
「赫燿晩秋」楽しい旅行がホラー物語に一転する、独自の絶望感が味わい深かったです。
あなたもシナリオが書ける
シナリオを書いたことがないと、難しそうに感じるかもしれません。しかし、自分が遊びたいと思える内容であれば、少しずつでも形にできるはずです。大切なのは、最初の一歩を踏み出すことです。
(1)好きなものから発想しよう
シナリオの出発点は自由です。好きな邪神や神話怪物、気に入った時代背景、心引かれる登場人物やアイテムなど、自分の興味のある要素から書き出してみましょう。それらを組み合わせるだけでも、物語の種になります。
(2)身近な舞台を活用しよう
舞台設定に悩んだときは、日常の延長にある場所に目を向けましょう。学校や職場、コンビニエンスストアなど、イメージしやすい場所は描写の助けになります。そこに潜む怪異を描けば、印象的なシーンにもなります。
(3)既存のシナリオを参考にしよう
あなたが面白いと感じたシナリオを読み返すことも、大きな助けになります。本コンテストの大賞や佳作の作品がどんな風に書かれているのか確認してもよいですし、公開されているシナリオ執筆ガイドラインやサンプルファイルを見るだけでも、シナリオの構成や流れがわかるでしょう。
まずは短いメモでも構いません。自分の描いてみたい要素を形にするところから、シナリオ作りを始めてみてください。