【初心者向け】能力値からわかる“クトゥルフ神話TRPG”入門!新版で探索者を創造しよう!

目次

  1. "クトゥルフ神話TRPG"は仲間と共に恐怖に立ち向かうゲーム
  2. "クトゥルフ神話TRPG"の能力値は探索者の個性を表現したもの  
  3. 能力値の意味を知ることからはじめよう  
  4. プレイする探索者の個性をイメージしながら能力値を決めよう  
  5. ほかの属性を決めよう  
  6. 職業と技能を決めて最後の仕上げをしよう  
  7. ゲームの展開を左右するダイス・ロールとは?  
  8. 探索者の誕生、さあ、冒険を始めましょう  

はじめに

 これから"クトゥルフ神話TRPG"を始めようとする初心者は「どこから始めたらいい?」「いろいろな用語がわからない」など悩んでしまう人も多いはず。

 この記事では、入門ルールである『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール(※)を手掛りに、能力値や技能値の意味や読み方を解説しながら探索者を作っていきます。探索者とはこのゲームであなたの分身となるキャラクターのこと。その作成は、ルールに従って能力値や技能値を決めていく形で進みます。この時、能力値や技能の意味を知り、その違いを考えることで、あなたの探索者はより、生き生きとした存在として活躍できるようになるのです。

 ※こちらからダウンロードできる『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』には探索者を作る際に必要な探索者シート(キャラクター・シート)も収録されています。まずはこちらを使って能力値などを記入していきましょう。


ライター:赤枝駆動(あかえだ・くどう)
略歴:雑誌やwebメディアでゲームやアニメに関する記事を執筆。TRPGやマーダーミステリーなどのアナログゲームに関する記事の執筆やイベントでGM(キーパー)も担当。

監修:アーカム・メンバーズ

"クトゥルフ神話TRPG"は仲間と共に恐怖に立ち向かうゲーム

 まず、ゲームの簡単な説明をしましょう。

 "クトゥルフ神話TRPG"は、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説から誕生したホラーの物語、クトゥルフ神話を元にした、恐怖を楽しむゲームです。プレイヤーは自分の分身であるキャラクターを作り、仲間とともにクトゥルフ神話の恐怖に立ち向かいます。あなた自身がホラー映画やホラー小説の登場人物になって、恐怖を体験するのです。

 プレイヤーのキャラクターは、ホラー映画などの登場人物と同じようにちょっとだけ好奇心が旺盛で、恐怖の物語についつい首を突っ込んでしまいます。ひどい目に遭うことだってあるでしょうし、理不尽に死んでしまうこともあるでしょう。死どころかもっと恐ろしい運命にみまわれることもあります。

 でも、ホラー映画を見るのと同じで、怖い体験やひどい体験をするのも実は楽しいのです。キーパー(ゲームの進行役のことです)やほかのプレイヤーと一緒に恐怖に立ち向かい、恐怖を楽しみましょう。また、恐怖を乗り越えて目的を達成した時の喜びはほかのゲームでは味わえないものなのです。

 ゲームの説明はこのへんにして、さっそくゲームに参加するためのキャラクターをつくってみましょう。なお、このゲームではプレイヤーの分身となるキャラクターを「探索者」と呼びます。未知なるものを探り、勇敢にもクトゥルフ神話の恐怖を探る者というわけです。

"クトゥルフ神話TRPG"の能力値は探索者の個性を表現したもの

 あなたの探索者はあなただけのキャラクターで、ほかのキャラクターとは違う個性を持つ唯一の存在です。その個性を表すのが8つの能力値です。通常、能力値は15から90の範囲で、大きければ大きいほど、その能力が優れていることになります。

能力値の意味を知ることからはじめよう

 能力値の名前はアルファベット3文字で、それぞれの能力値の意味を表す英語の頭3文字を取ったものになります。まずは、能力値の意味と名前を覚えていきましょう。

●STRは筋力

 STRは、英語の「Strength(ストレングス)」、「筋力」のことです。この能力値は、探索者が体一つで発揮できる物理的な力を表します。簡単に言えば、力の強さです。どれほど重いものを持てるか、誰かと力比べするようなときに影響します。STRが大きければ、近接戦で探索者が与えるダメージが大きくなるでしょう。逆に、STRがゼロになるようなことがあれば、ベッドから立ち上がることもできません。

●CONは体力

 CONは英語の「Constitution(コンスティテューション)」、「体力」のことです。この能力値は、探索者の健康や頑強さを表します。毒や病気などに耐える生命力も表し、耐久力を決めるときに影響します。高いCONがあれば、厳しい環境にも耐えられるかもしれません。逆に、CONがゼロになってしまえば、死んでしまうでしょう。

●SIZは体格

 SIZは英語の「Size(サイズ)」、「体格」のことです。この能力値は、探索者の身長と体重を総合して反映したものを表しますので、体の大きさといってもよいでしょう。そのため、狭い場所を通り抜けようとしたりするときには、SIZが大きい探索者は苦労するかもしれません。その代わり、SIZが大きければ、耐久力や近接戦で与えるダメージも大きくなります。

●DEXは敏捷(びんしょう)性

 DEXは英語の「Dexterity(デクスタリティ)」、「敏捷(びんしょう)性」のことです。この能力値は、探索者の身体的な機敏さと速度を表します。動きの素早さを表すため、戦闘ではDEXの高い順に行動します。器用さも表すためDEXが高いほど、手先の作業に向いています。

●APPは外見

 APPは英語の「Appearance(アピアランス)」、「外見」のことです。この能力値は、キャラクターの人を引きつける力や、肉体的な魅力を表します。APPが高いキャラクターはチャーミングで、好感が持てる人物になり、交渉でも役立つことになります。逆に、APPがゼロだと、ほかの人に嫌われたり、避けられたりするかもしれません。

●INTは知性

 INTは英語の「Intelligence(インテリジェンス)」、「知性」のことです。この能力値は、探索者の抜け目のなさや、論理と直感を飛躍させる能力を表します。探索者がどれだけ理解し、情報を分析したり、何かに気づいたりできるかにかかわるので、INTの高い探索者は、多くの事柄に気づくことができるでしょう。

●POWは精神力

 POWは英語の「Power(パワー)」、「精神力」のことです。この能力値は、意思の力、心、そして精神的安定性を合わせたものを表します。魔術に使うマジック・ポイントと恐怖への耐性を表す正気度ポイントもPOWから導かれます。

●EDUは教育(知識)

 EDUは英語「Education(エデュケーション)」、「教育」のことです。この能力値は、正規の学校教育を通じて探索者が蓄積してきた知識を表します。EDUが60あれば高卒程度、70あれば大学生程度、80あれば大卒程度の教育を受けたものと考えてよいでしょう。EDUは学んできた知識の量を表すため、世界に対する情報の量でもあります。逆に言えば、EDUが低い探索者は、広い知識を持っていないことになります。

自分の探索者の能力値を決めよう

 いよいよ能力値を決めていきます。

 今回、探索者を作るのに使うのは『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』。公式サイトから無料でダウンロードできます。
 このルールにしたがって、40、50、50、50、60、60、70、80の8つの数値を8つの能力値に割り振ります。

 ※『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』では、能力値をダイス(サイコロ)を振ってランダムに決める方法も紹介されています。この方法だとより探索者の幅が広がります。

●"クトゥルフ神話TRPG"の能力値の平均値(目安)はどのくらい?

 割り振られる8つの数値は、その能力値に関するダイス・ロール(次の項目を参照)が成功する確率のパーセントを表します。例えば、能力値の数値が60なら60%の確率で成功することになります。8つの数値の平均は57.5。半分より少し成功する確率が高いということになります。探索者は普通の人よりもちょっとだけ優秀なのでしょう。

 キャラクターを作る際には、能力値の説明を参考にして、どんなキャラの探索者で遊びたいのか考えながら能力値を決めていきましょう。戦闘能力の高い武闘派の探索者ならSTRやCONに大きな数値、博識な学者肌の探索者ならEDUやINTに大きな数値を割り振りましょう。 
 割り振りが決まったなら、それぞれの数値を探索者シートの「能力値」にある各能力値名の隣の一番大きな空欄に記入します。


●2分の1の値と5分の1の値を記入する

 能力値を記入したその右側には上下に並んだ2つの小さな空欄があります。上の空欄には能力値の2分の1の値、下の空欄には5分の1の値を記入します。端数は切り捨てです。
 この数値についてはあとで説明します。

ほかの属性を決めよう

 能力値以外にも探索者の特徴となる属性があります。先ほど決めた能力値を使って、ダメージ・ボーナス、ビルド、耐久力、移動率、正気度ポイント、マジック・ポイントを決定します。また、ダイスをロールして幸運の値を決定します。

●ダメージ・ボーナスとビルドは戦闘に影響

 力が強く体格が大きい探索者は、より大きなダメージを与えることができます。反対に力が弱く体格が小さな探索者が与えるダメージは小さくなります。これをダメージ・ボーナスといいます。
 ビルドは「戦闘マヌーバー(取っ組み合いなど)」の際の有利不利を決める値です。
 どちらも能力値のSTRとSIZの値を合計し、表を参照して該当する値や記号を探索者シートに記入します。


●耐久力はダメージへの耐性

 耐久力は、CONとSIZを足して、その合計を10で割った値です(端数切り捨て)。耐久力の欄を見て、計算した値の数字を○で囲んでください。耐久力は受けたダメージによって変化しますので、あとで消せるもので記入してください。
 探索者が戦闘などでダメージを受ければ、耐久力は減少していきます。これが下がりすぎると意識を失い、やがて死んでしまいます。


●移動率(MOV)は1ラウンドに動ける距離

 移動率は、そのキャラクターがどれだけ移動できるかを示します。普通の人間のキャラクターなら移動率は8です。1ラウンド(戦闘ラウンド)に移動率の5倍に等しい距離(MOV8なら40m)を移動できます。
「能力値」の欄にある移動率の空欄に「8」と記入してください。

 なお"クトゥルフ神話TRPG"において1ラウンドの長さは、キャラクターが1回何か行動できるくらいの短い時間だというだけで、厳密には決まっていません。

※『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』では、移動率が8より大きかったり小さかったりすることがあります。

●正気度ポイント(SAN)は恐怖への耐性

 ゲームの中では恐ろしい存在と遭遇することになります。そうした場合、クトゥルフ神話の恐怖に耐えることができるかどうかを示すのが正気度ポイントです。

 作り立ての探索者の正気度ポイントは能力値POWと同じ値です。正気度の欄を見て、POWの値と同じ数字を○で囲んでください。正気度ポイントは変化しますので、あとで消せるもので記入してください。
 恐ろしい目に遭った場合に行なう〈正気度〉ロールが成功する確率はこの値になります。ロールの結果によっては、正気度ポイントが減る可能性があります。減り方によっては、狂気に陥ってしまうかもしれません。


●マジック・ポイント(MP)は呪文や神秘的な装備の使用で消費する値

 "クトゥルフ神話TRPG"の中では、キャラクターが邪神にまつわる呪文を学んだり、神秘的な装置や魔術的な効果を表すアイテムを手に入れたりすることがあります。その際に魔法の力を使う場合があり、その魔力というべき力を表現するのがマジック・ポイント(MP)です。MPは呪文をかけるほか、神秘的な装置や魔術的な効果が力を発揮する際にも使われます。MPは休息を取ることで回復しますが、場合によっては、数値そのものを忌まわしき存在に捧げることもあります。

 作り立ての探索者のMPは能力値POWの5分の1です。計算した数字を○で囲んでください。MPは変化しますので、あとで消せるもので記入してください。


●幸運は運命の気まぐれを判定する際に使用する

 幸運はまさにキャラクターの運を表現する能力値です。運命が状況を左右するような場合に、それを判断するためにロールします。
 作りたての探索者の幸運は、3D6(6面ダイス3個)を振り、その結果を5倍した値です。計算した数字を○で囲んでください。幸運は変化しますので、あとで消せるもので記入してください。


職業と技能を決めて最後の仕上げをしよう

 職業は探索者がどんな仕事をしているかを選ぶもので、それにふさわしい技能(職業技能と呼びます)にポイントを割り振ることができます。例えば、職業が私立探偵ならば、対人関係や情報収集、変装や写真に関わる技能を得ます。

●技能の種類と意味

 技能とは、特定のジャンルの行動に長じていたり、知識に習熟しているかどうかを表すものです。〈人類学〉や〈医学〉のような学問の知識と応用技術もあれば、〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉のような対人関係の技術、〈聞き耳〉〈目星〉のような知覚に関する能力、〈図書館〉のような情報を入手する能力、〈跳躍〉のような身体能力もあります。〈科学〉や〈芸術/製作〉〈操縦〉などでは、具体的なジャンルを選択します。例えば、〈芸術/製作(ダンス)〉や〈操縦(航空機)〉といった具合です。自動車の運転は〈運転(自動車)〉となります。

 戦闘で役立つ技能には〈近接戦闘〉〈射撃〉〈回避〉があります。〈射撃〉と〈近接戦闘〉は具体的な手段を選びます。〈近接戦闘(格闘)〉〈射撃(拳銃)〉といった具合です。
 また、職業によってはキャラクターの財産を示す〈信用〉という技能もあります。

●能力値からイメージできる職業を選んでみよう

 能力値とほかの属性が決まれば、探索者がどんなキャラクターなのか、その姿が想像できるはずです。筋骨隆々のファイター、敏捷なアスリート、知性が高いスペシャリストなどなど。次は、探索者がどんな人生を送って来たのか、どんな生活をしているのかを決めます。それが職業と技能を決めるということなのです。
 STR、DEX、CON、SIZが高いなら体力系の職業に就いているでしょうし、EDU、INTが高いなら知識を使う職業に就いているでしょう。APPが高いなら、人と接する機会が多い職業に就いているかもしれません。

 『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』には、作家、ディレッタント、医師、ジャーナリスト、刑事、私立探偵、教授という職業がサンプルとして挙げられています。
 それぞれの職業には、後述する「職業技能ポイント」を割り振れる技能が決まっています。どれもその職業の特徴となる技能です。技能の説明を読んで、どの職業を選ぶか考えてみましょう。

 職業を選ぶ時は役割分担も必要です。探索者ごとに別々の職業を取ったほうがさまざまなことができ、出番の奪い合いにもならないで済みます。ほかのプレイヤーと相談して選びましょう。

●技能ポイントを割り当てよう

 『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』では、職業を決めたら、それぞれの職業に書かれた8つの職業技能と〈信用〉技能の9つの技能に技能ポイントを割り当てます。

 やり方は簡単で、技能1つに70%、技能2つに60%、技能3つに50%、同じく技能3つに40%を割り当て、それを探索者シートの各技能名の左の大きな空欄にそのまま書き込みます。この時、探索者シートに書いてあるパーセント(基本成功率)は無視します。
〈信用〉技能は、その値が経済状態を決めますので、自分の探索者にふさわしい資産を考えて数値を割り当てましょう。

 ※『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』の場合、能力値EDUから職業ポイントを導き出し、それを1%単位で職業技能に割り振ります。この時、技能の基本成功率にポイントが加算されます。

 職業技能ポイントの割り当てが終わったら、次に探索者の「個人的な興味の技能」にポイントを割り当てることができます。例えば、「科学者の探索者なんだけど、趣味で登山をしているので、〈登攀〉と〈サバイバル〉の技能にポイントを割り当てます」といったことができます。「個人的な興味の技能」は、職業技能以外の技能から4つ選び、それぞれ基本成功率に+20を加えます。

 この時、残念ですが〈クトゥルフ神話〉技能を選ぶことはできません。クトゥルフ神話は探索者が探索を行うことで知っていくのです。
 職業と同様、役割分担も重要です。さまざまな状況に対応できるよう、探索者同士で弱点をカバーするように工夫するのもよいでしょう。

 また、筋骨隆々のファイターなら対人関係技能の中から〈威圧〉を選ぶのがふさわしいでしょうし、知性が高い学者タイプならラテン語などの〈外国語〉を選んで魔道書の解読に挑戦するのも面白いでしょう。

 ※『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』の場合、能力値INTから個人的な興味の技能ポイントを導き出し、それを1%単位で自由に割り振ります(〈クトゥルフ神話〉技能を除く)。

●名前や年齢を決めよう

 能力値と職業、技能が決まると、探索者の形がだいぶ整ってきました。ここで、探索者の名前、性別、年齢といった個人情報を決めていきましょう。

※『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』の場合、年齢が幼かったり、年老いていたりすると、能力値や属性に影響が出ます。

●所持品は職業からイメージして決める

 探索者がどのような所持品を持っているかは、ゲームの舞台と職業、そして〈信用〉の値から考えてみましょう。

 ゲームの舞台がいつの時代でどこなのかは重要です。1920年代のアメリカで私立探偵なら小綺麗な服の内ポケットに銃を隠し持っているかもしれませんが、現代日本では銃器は違法です。

〈信用〉技能の値は探索者の経済状態を決めます。割り当てたのが70%なら裕福、40%なら平均ということになります。所持品に関してはある程度自由にできるので、経済状態にふさわしい装備を整えましょう。細かい部分はキーパーと相談しましょう。

●バックストーリーを決めよう

 探索者作成の仕上げは、バックストーリーの決定です。バックストーリーは、キャラクターの背景設定だと考えてください。

探索者シートのバックストーリーの欄には、10個の項目がありますが、ここで埋めるのは左側の「容姿の描写」「イデオロギー/信念」「重要な人々」「意味のある場所」「秘蔵の品」に、加えて、右側の一番上「特徴」までです。「負傷、傷跡」とその下はゲームを進めていく中で得ていくものなので、最初は空欄でかまいません。

 最初は簡単なものでよいし、困ったら、『新クトゥルフ神話TRPG  ルールブック』に掲載されているランダム表を参考にしてもいいでしょう。例えば、「黒髪で背が高い」「政治や宗教には興味がない」「親友がいる」「故郷の山が好き」「幼なじみにもらった玩具を大事にしている」くらいで十分です。

 バックストーリーは、キーパーと一緒にあなたの探索者の物語を作っていくための材料です。キーパーと相談しながら、どうやったら面白い物語が描けるか、イマジネーションを膨らませていきましょう。

ゲームの展開を左右するダイス・ロールとは?

 探索者ができあがったところで、少しゲームのルールを説明しましょう。

 このゲームで創られる物語は決まりきったものではなく、キーパーとプレイヤーの会話や発想、そして、行動の成否を決めるダイス・ロールによって、大きく変わっていきます。
 ダイス・ロールは、このゲームをを遊ぶ上で最も基本的なルールの一つです。ダイス・ロールがキャラクターの運命を左右することになるかもしれません。そんなハラハラドキドキの体験もまた、"クトゥルフ神話TRPG"の魅力なのです。

●行動の成否は能力値や技能値を基準にダイスをロールすることで決まる

 ゲームが始まったら、探索者たちは危険に遭遇することもあるでしょう。あるいは、ちょっと難しくて失敗の可能性がある事柄に賭ける瞬間があるかもしれません。そうした場合、キーパーは、探索者たちにダイス・ロールを指示することになります。例えば、襲ってきた触手を避けるために〈回避〉の技能ロールが必要になるかもしれません。

 ダイス・ロールはD100(パーセント・ダイス)で行ないます。D100は2つのD10(10面ダイス)の組み合わせで片方を10の位、片方を1の位とすることで、1から100の数字を出せます。出た数字が指定された能力値や技能値以下だったら、その行動は成功します。つまり、能力値や技能値はある事柄を成功させられる確率なのです。能力値や技能値を基準にして行なうダイス・ロールをまとめて技能ロールと呼びます。

●技能ロールの難易度

 技能ロールは必要に応じて行なわれますが、誰でも簡単にできそうなことだったり、判定することで結果が大きく変わらなかったりする場合には、行ないません。例えば、何もない広い場所で、自動車をゆっくり走らせるのには技能ロールは必要ありません。

 ですが、技能ロールの結果で何か起こりそうな場合、例えば、敵が運転するトラックに幅寄せされ、崖から落ちそうな場合には、トラックをよけるために〈運転(自動車)〉の技能ロールが必要になるでしょう。
 状況によっては探索者の行動がもっと難しくなることがあります。雨が降って路面が濡れていたり、あるいは寒さで凍結していたりすれば、運転は難しくなるはずです。

 技能ロールの際は、行動の難しさをキーパーが決めます。難易度は3段階あり、通常のものなら「レギュラー」、難易度が上がれば「ハード」、さらに難しいなら「イクストリーム」となります。
 難易度がレギュラーであれば、技能ロールの基準は、探索者を作る時に決めた技能値と同じ値です。この値をフル・バリューと呼びます。
 行動が通常より難しいとキーパーが判断した場合、難易度がハードなら技能値の2分の1の値、イクストリームなら5分の1の値を基準にして技能ロールを行ないます。探索者を作る時に技能値の2分の1と5分の1の値を記入しましたよね。

●INTロールと〈アイデア〉ロール

 能力値INTを使うロールには、INTロールと〈アイデア〉ロールの2つがあります。どちらも同じ値を基準にしますので、探索者シートではINTと並べて「アイデア」と書かれています。

 INTロールはパズルやなぞなぞを解く場合に使います。〈アイデア〉ロールは、探索者が探索に行き詰まった時に用います。〈アイデア〉ロールに成功したら、キーパーは探索者が見落としている手掛かりや、新たな手掛かりを与えて、ゲームを先に進めることになります。

●恐怖に直面した時の〈正気度〉ロール

 "クトゥルフ神話TRPG"は、恐怖に耐えてクトゥルフ神話に立ち向かう人間をテーマにしたゲームですが、 この恐怖を再現するルールが〈正気度〉ロールです。

 怪物と遭遇したり、非現実的な体験をしたり、友人の切り刻まれた死体を発見したりするたびに、現在の正気度ポイントを基準として〈正気度〉ロールを行います。ロールに成功すれば正気度を失わなくて済むか、失っても少しで済みますが、失敗すると正気度を大きく失います。

 正気度ポイントが少なくなると、次の〈正気度〉ロールの成功率が下がりますので、恐怖を体験するほど、恐怖への耐性が下がっていくのです。ある意味破滅的なルールですが、“クトゥルフ神話TRPG”の醍醐味の一つと言えるでしょう。

 一度に多くの正気度ポイントを失った探索者は狂気に陥る可能性があります。狂気に陥ると発作が起こったり、妄想にとらわれたりして、正常な行動がとれなくなるかもしれません。叫びながら逃げ出したり、すくんで動けなくなってしまったり、暴れ出したり、それも物語の一部なのです。

 あまりにも多くの正気度ポイントを失ってしまったら、簡単には回復しない「不定の狂気」に陥りますし、正気度ポイントがゼロになってしまえば、回復困難な永久的狂気に陥ることになります。あなたの探索者もそうなるかもしれません。それもまた、物語の一部ですし、このゲームの楽しみの一部なのです。

さあ、冒険を始めよう

 ここまで"クトゥルフ神話TRPG"の探索者の作成とルールの一部を紹介してきました。これまでの内容は、無料でダウンロードできる『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』に書かれていますので、ぜひ読んでみてください。

 より深く"クトゥルフ神話TRPG"を楽しみたいのなら、『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』を購入し、それからソースブック、シナリオ集などに進むとよいでしょう。

 スマホでいつでもルールブックやソースブックを読めるアプリ『クトゥルフ神話TRPG  ルールブックPLUS』をダウンロードしておけば、ゲームで遊んでいる時にわからないことがあってもすぐに確認できるので便利です。アプリの無料のフリープランでは『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』が読めますし。有料プランに加入すれば、本格的なルールブック(『クトゥルフ神話TRPG』『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』)やソースブックが読めるようになります。

 現代日本の職業を紹介する『新クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2020』などのソースブックを使えば、より魅力的な探索者を作ることもできます。

 さあ、あなたも恐ろしくも魅力的なクトゥルフ神話の世界へ飛び込んでいきましょう。

※『"新クトゥルフ神話TRPG" クイックスタート・ルール』は、クトゥルフ神話TRPGの入門ユーザーに向けて作成した入門用ルールブックです。
 より詳細なルールを楽しみたい方は『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』をご確認ください
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